現代人の私たちには、歴史上の大きな変革の中で生きています。
そして、この「4つの変革」により、歴史上初めて万人の人生の選択肢が広がりました。
しかし、この4つの革新の恩恵が大きすぎる反面、内的には自分の道を決めきないことが、ときにあります。
今回はそこについての、「アイデンティティ」の観点から書きたいと思います。
1、「技術」の革新
今さらではありますが「インターネット」という技術革新が起きたことによって、
世界中の情報にアクセスできるようになりました。
これにより、私たち万人が世界中の情報に触れることができるようになったことは、素晴らしいことなのだが、
ときに「情報過多」となり、選択肢を絞れない状況になっています。
2、「コミュニケーション手段」の革新
その昔、電話の出現によって、直接会わなくても「会話」ができるようになった。
そして、スマートフォンの出現により、私たちは、「電話による会話」よりも「LINE」や「FACEBOOK」を使って
「文字」と「写真」を使ってよりコミュニケーションを取るようになりました。
しかし、それはときに、「深いつながりがある人」との「対話」だからこそ動く「腹のそこからの想い」を感じる機会よりも、
「万人」に見てもらいやすい「文字と写真」により「人の評価にさらされた言葉」を発信する機会が増やすことになっています。
3、「移動手段」の革新
LCC(格安航空会社)の出現は歴史上はじめて、飛行機を万人の乗り物としました。
東京―大阪間の新幹線の同程度の「価格」と「時間」で、
「ジェットスター」や「ピーチ」を使えば、近場であれば海外にも行けるようになりました。
そして、グローバル化の流れは今後より大きくなっていくことでしょう。
しかし、選択肢が多い状態で、自分の軸、道が定まらないまま「海外経験」という強いインパクトを受けると、
そのたびに、自分の軸がぶれてしまうことにも繋がる可能性があります。
4、「価値観の自由」の革新
現代の私たちは、「ダイバーシティ(価値観の多様化)」の時代に生きています。
「生き方」も「働き方」も「ステレオタイプ(画一的な固定観念)」で決まるわけではありません。
自分で、「自由に価値観」を選択し、「人生の道」を選ぶことがよしとされる時代です。
しかし、それがゆえにときに「自分軸を持たねばならない脅迫観念」を作ります。
そして、自分軸が無いことに悩み、道が定まらず、人生の岐路で右往左往しかねません。
しかし、「価値観」を独自に作り上げようとするならば、それは「自分哲学」を作ることであり、
容易ではありません。
そして、可能性が広すぎるがゆえに、価値観が定まらず、そして、価値観を定めるには、難しすぎるのです。
「アイデンティティの拡散」状態
これら、4つの大きな社会のながれによって、私たちは、「人生に道」を決めかねています。
だからこそ、現代人の私たちは、みなが「自己探求」し「自分探し」をしている時代なのです。
しかし、それは「自分探しの迷宮」と言われるように、非常に難易度の高い迷宮となっています。
歴史上の哲学者たちが挑戦した、「人類の命題である」
「私は何者であり、どこへ行くのか?」
の答え探しだからです。
この状態は、「アイデンティティ」の観点から言うと、
いろんな自己の可能性の中から自分が選びきれない、
「アイデンティティの拡散」
(Identity-diffusion)
と言われる状態です。
これは、「自己同一性の拡散」ともいわれ、
アイデンティティの研究の第一人者である心理学者エリク・H・エリクソンが使った言葉です。
大人こそ必要な真の自己探求
現代人は、4つの変革によって、恩恵がありがゆえに、可能性を絞りきれずアイデンティティの拡散状態になってしまうのです。
これは、昔は青年期の課題でした。
しかし、現代では大人となり、「できること」が増えれば、増えるほど、なおさら選択肢が増え、この課題は大きくなっていきます。
だからこそ現代では、できる事が広がった大人こそ、「さらなる自己探求」が必要な時代となります。
そして、「真の自己」と言える自己を再構築するからこそ、新たな「真の道」を進んでいくことができるのです。